令和6年11月23日(祝・土)湯浅正太さん講師の「人権を考える市民の集い」講演会を開催しました。テーマは「みんなとおなじくできないよ」~こどもの人権をきょうだい児の視点から考える~でした。きょうだい児についての講演や障がい児の兄弟姉妹を支援するための絵本の朗読もあり、予定時間を越えての講演会となりました。
多数のご参加、ありがとうございました。
ご存知ですか『世界人権宣言』!
2月10日の「世界人権デー」にちなみ、その由来や進化を勉強してみましょう。
「世界人権宣言」とは
かつて、人権問題はそれぞれの国の国内問題と考えられていました。しかしながら、20世紀には、世界を巻き込んだ大戦が二度も起こり、特に第二次世界大戦中においては、特定の人種の迫害、大量虐殺など、人権侵害、人権抑圧が横行しました。このような経験から、人権問題は国際社会全体にかかわる問題であり、人権の保障が世界平和の基礎であるという考え方が主流になってきました。
そこで、昭和23年(1948年)12月10日、国連第3回総会(パリ)において、「世界人権宣言」が採択されました。
世界人権宣言は、基本的人権尊重の原則を定めたものであり、それ自体が法的拘束力を持つものではありませんが、初めて人権の保障を国際的にうたった画期的なものです。
この宣言は、すべての人々が持っている市民的、政治的、経済的、社会的、文化的分野にわたる多くの権利を内容とし、前文と30の条文からなっており、世界各国の憲法や法律に取り入れられるとともに、様々な国際会議の決議にも用いられ、世界各国に強い影響を及ぼしています。
『世界人権宣言』条文はこちら
「宣言」から「条約(国際人権規約)」へ
さらに、世界人権宣言で規定された権利に法的な拘束力を持たせるため、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)」と「市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)」の2つの国際人権規約が採択され、その後も個別の人権を保障するために様々な条約が採択されています。これらの条約が保障する権利の内容を理解し、広めていくことが一人一人の人権を守ることにつながるのです。
<国際人権規約>
■「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)」
A規約は、労働の権利、社会保障についての権利、教育及び文化活動に関する権利などの、いわゆる社会権を主として規定したものです。社会権とは、人権の保障を名実ともに充実したものにするためには、国家が個人の生活の保障に一定程度の責任を果たすべきであるという認識に立って、国の施策により個人に認められている権利です。
■「市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)」
B規約は、人は生まれながらにして自由であるという基本的考えのもとで、個人の生活を公権力の干渉や妨害から保護するという観点に立った権利、つま自由権的権利を中心に規定しています。具体的には、表現の自由、移動の自由、身体の自由、宗教の自由、集会・結社の自由に加え、参政権が規定されています。締約国は、すべての個人に対して、いかなる差別もなしにこれらの権利が尊重され、確保されることを義務として負っています。
※我が国は、昭和54年(1979年)6月21日に両規約を批准しました。
<主要な人権条約>
■あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)
人種、民族に対する差別は依然として存在し、このような差別を撤廃するためには、各国に対し、差別を撤廃するための具体的な措置の履行を義務づける国際文書を作成することが必要とされ、昭和40年(1965年)の国連総会において採択されました。(我が国は、平成7年(1995年)12月5日に加入しました)
■女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)
すべての人間は、そもそも生まれながらに自由かつ平等であることから、男女も個人として等しく尊重されるべきであるとの基本的理念を実現すべく、昭和54年(1979年)の国連総会において、この条約が採択されました。女性であるとの理由のみによって生き方を制約されることなく、個人として男性と平等な権利・機会・責任を享受できる、完全な男女平等を実現することを目的として、遅滞なく措置をとることが、締約国には求められています。(我が国は、昭和60年(1985年)6月25日にこの条約を批准しました)
■児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)
世界には、貧しさや飢え、戦争などで苦しんでいる子どもたちが大勢います。そのような現実を踏まえ、子どもの人権や自由を尊重し、子どもに対する保護と援助を進めることを目指して、平成元年(1989年)に児童の権利に関する条約が国連総会で採択されました。
我が国は、平成6年(1994年)4月22日にこの条約を批准しました。この条約は、18歳未満のすべての子どもを対象とし、
◇子どもが人種、皮膚の色、性などで差別されてはならないこと
◇両親の意思に反して子どもを両親から引き離してはならないこと
◇子どもは、自分のことについて自由に意見を述べ、自分を自由に表現することが認められるべきであること(意見表明権)
◇子どもは、暴力や虐待といった不当な扱いから守られるべきであることなどを盛り込んでいます。
■拷問及びその他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱又は刑罰に関する条約
(拷問等禁止条約)
拷問の禁止については、世界人権宣言及びB規約等において既に規定されていました。しかし、1970年代に、一部の国の軍事独裁政権による拷問と見られる行為に対し国際的な非難が高まったことを背景に、拷問を実効的に禁止する新たな国際文書を作成する必要性が強く認識されるようになり、昭和59年(1984年)の国連総会において、この条約が採択されました。
本条約は、「拷問」を公務員等が情報収集等のために身体的、精神的な重い苦痛を故意に与える行為と定義し、各締約国が拷問を刑法上の犯罪とするとともに、そのような犯罪人の引渡し等について規定しています。(我が国は、平成11年(1999年)6月29日にこの条約に加入しました)
■障がい者の権利に関する条約(障害者権利条約)
障害者権利条約は21世紀では初の人権条約であり、2006年12月13日に第61回国連総会において採択されました。2008年4月3日までに20ヵ国が批准し、2008年5月3日に発効しましたが2008年5月3日現在日本国は批准していません。
参考文献:法務省・全国人権擁護委員連合会広報冊子、大阪人権問題映像啓発推進協議会広報冊子 他